2016年4月開始のTVアニメ「ハイスクール・フリート」は、放映開始前までの作品タイトルは「はいふり」とされており、美少女たちが繰り広げる楽しい日常を描いた作品として多くのアニメファンたちから認知されていました。
蓋を開けてみれば【フリート=艦隊】とのタイトルが掲げられた、砲撃あり雷撃ありの火薬満載アニメだったわけですが、それ以前に発表されたあらゆるキービジュアルや広告などには努めてその要素を見せないよう配慮されていたように思います。

月刊誌「コミックアライブ」に連載されている漫画版は、タイトルを「はいふり」として、2015年12月号(同年10月発売)より連載が開始されており、アニメの放映開始からおよそ半年前からスタートしているだけあって、フリート要素はアニメ開始前に掲載された第6話までには一切登場しません。
アニメ放映前に視聴者を呼び込むための広告塔として機能する役割を期待されつつ、TVアニメでは不十分になりがちなキャラクター紹介のエピソードを盛り込むようにしつつ、この作品ならではの「フリート要素は隠したままにしておく」事を義務付けられた中で描かれた、半年間の連載内容が詰められた興味深い一冊がこの、2016年4月23日に発売となった「はいふり」第1巻です。

はいふりコミックス1巻
帯が付いていると五十六が隠れる、というか、帯を外すと五十六が出てくる仕様の表紙です。 既に背景には晴風と思われる艦が描かれ、キャラクター達は制服を着て、ミケちゃんの頭には艦長帽が乗っているため、ロゴこそアニメ放映前から連載されているだけあって「はいふり」仕様ですが、絵柄はきっちりハイスクール・フリート仕様になってますね。



TVアニメを観ていると、名前付きのキャラクターが一斉に30人も登場するために、一部の主要キャラクターを除くと人物紹介のエピソードは皆無に等しい状態でストーリーが進んでいく状況となっているため、視聴者が自分好みのキャラクターを見つけたり、これからキャラクター達が己の特性を発揮していく展開を想像する余地が少なくなっているのが残念に思います。

この漫画版には、全員とはいきませんがキャラクターの性格や背景を知ることができるエピソードが盛り込まれており、第1巻に収録された第6話までには、彼女たちが「横須賀女子海洋学校」に合格、入学するまでのエピソードが描かれているため、アニメとは内容が異なる、いわば「前日譚」となっているため、単なるコミカライズとして比較しながら見て楽しむのではなく、アニメで興味を持った視聴者がキャラクター達の人物像を知り、感情移入できる機会を得られるのではないでしょうか。
アニメで観ているだけでは知り得ない魅力を見つけられるかも。

それではレビューと言うよりかは各話ごとのあらすじ紹介をしていきます。
アニメの視聴者に興味を持ってもらいやすいからと思い、敢えてネタバレを含んだ紹介内容で失礼します。



【第1話】
岬明乃(ミケちゃん/後の艦長)と柳原麻侖(マロンちゃん/後の機関長)の出逢い(?)が描かれている。


【第1.5話】
柳原麻侖と黒木洋美(クロちゃん/後の機関助手)の仲良し幼馴染ぶりと、横須賀女子海洋学校の受験を決意するエピソード。クロちゃんは少し方言が出ており、宗谷ましろ(シロちゃん/後の副艦長)に強い憧れを抱いている様子が描かれている。


【第2話】
杵崎ほまれ(ほっちゃん/後の給養員)と杵崎あかね(あっちゃん/後の給養員)の双子姉妹が店番をしている和菓子屋船「杵崎屋」に、伊良子美甘(ミカンちゃん/後の給養員)が和菓子材料の納品にやってくる。その後、小さい船で移動営業を始め、そこに柳原麻侖と黒木洋美が合流するエピソード。


【第3話】
和住姫萌(ヒメちゃん/後の応急長)と青木百々(モモちゃん/後の応急員)が、祭の法被を仕立てる。そこで交わされる会話から、横須賀女子海洋学校の受験を決意するエピソード。


【第4話】
元日の諏訪神社を舞台に、当神社の娘である八木鶫(つぐちゃん/後の電信員)が巫女服で初詣の参拝客を応対し、友人である宇田慧(めぐちゃん/後の電測員)が応援する状況から、別の神社の娘である知床鈴(リンちゃん/後の航海長)が参拝にやってきて、手水(清め)の作法が完璧だったせいで、つぐちゃんから神職関係者だと見抜かれ手伝わされるエピソード。初詣の参拝客として立石志摩(タマちゃん/後の砲術長)や宗谷ましろも登場している。


【第5話】
横須賀女子海洋学校の受験当日。若狭麗緒(レオちゃん/後の機関員)、伊勢桜良(サクラちゃん/後の機関員)、駿河留奈(ルナちゃん/後の機関員)、広田空(ソラちゃん/後の機関員)の仲良し四人組が揃って試験前のひとときを騒がしく迎え、それを見た麻侖と洋美のコンビに揶揄されたり、機関員候補として一緒の試験を受けるエピソード。それと並行して、等松美海(ミミちゃん/後の主計長)と野間マチコ(マッチ/後の見張員)の出逢いからの、美海がマチコに惚れた様子が描かれている。


【第6話】
受験の結果発表で、合格したことを喜ぶ各キャラクターの姿が描かれている。仲良し四人組と麻侖、洋美コンビの漫才のような掛け合いから、さっそく友人になっている様子。


【おまけ】
アニメの第1話にも描かれていた、岬明乃と知名もえか(もえちゃん/武蔵艦長)の掛け合いが描かれている。



この巻に収録された話まででアニメの第1話に合流しているため、第7話および第2巻の内容はアニメと同じか、それを補足するようなものになると思われます。つまり第2巻以降が名実ともにコミカライズと言えるでしょう。

この漫画から、アニメでは知り得なかった以下のキャラクター相関が読み取れました。
  • マロンちゃんとクロちゃんの幼馴染コンビと、杵崎姉妹&ミカンちゃんは入学以前からの友人。
  • ヒメちゃんとモモちゃんの応急員コンビは入学以前からの友人。
  • つぐちゃんとめぐちゃんは入学以前からの友人。
  • リンちゃんとつぐちゃんは、入学する前(約3ヶ月前)から神社の娘同士であることを知っている。
  • ミミちゃんがマッチLOVEになったのは試験の時に出逢って以来。
また、以下の事も推察できます。
  • クラス分け(登場艦分け)は試験の成績で決まるとされているのに、友人が揃って同じクラス(晴風)に入っているのが気になる。筆記と実技の両方があるのに、なぜ差が付かないのか。(四人組は学力がほぼ同じだからと明記されているから余計に気になる)
  • マロンちゃんのコミュ力と、人を惹き付ける魅力が凄い。もうマロンちゃんが主人公でいいんじゃないかと思えるぐらい。少なくともこの漫画の活躍と登場カット数からは完全に主人公扱いである。
  • クロちゃんはいつか方言が露出して、いじられキャラになるかもしれない。
  • つぐちゃんは公式サイトに不思議ちゃんと書かれているが、めぐちゃんと共謀しリンちゃんを誘導尋問して言質を取ったりと、油断のならないとんだ食わせ者である。
  • ヒメちゃんは入学前の普段着からジャージ&スパッツ姿だった。
  • タマちゃんは投球フォームが様になっている上に、遠投でほぼ正確に標的へ向かっていることから、ソフトボールが特技とされているが実際かなりのセンスを持っているのかもしれない。やきう回が楽しみですね。
  • ルナちゃんはアホの子可愛い。マロンちゃんと漫才してほしい。
この巻で特に魅力を振りまいているキャラクターはこの娘達かと思います。

名前 愛称 顔画像 評論
柳原 麻侖 マロンちゃん 文句なしのMVP。
第4話を除くほぼ全てのエピソードに絡んでおり、その魅力溢れるキャラっぷりに驚かされる。
ハイスクール・フリート本編は早々に切り上げて、さっさとマロンちゃん主役のスピンオフ作品をおっぱじめたほうがいいとさえ思えるほど。
杵崎 ほまれ ほっちゃん 2人揃って、マロンちゃんに毒を含んだようなセリフを吐いたり、わざとらしい反応をしたりと、仲が良いからこそ踏み込めるからなのか息の合った漫才を繰り広げるため、マロンちゃんの魅力を引き出している名脇役感がある。
杵崎 あかね あっちゃん
八木 鶫 つぐちゃん 不思議ちゃんというから、タマちゃん(もしくはガルパンの丸山ちゃん)みたいな無口キャラを想像していたら、予想外に快活で元気なキャラだった。
巫女服姿を披露している点もポイント高い。
等松 美海 ミミちゃん 女子校が舞台なのだから、期待されるのが百合要素。
ミミちゃんは見た目にもわかりやすくマッチLOVEぶりを露見しているため、ライトな百合キャラとして期待値が高い。
駿河 留奈 ルナちゃん なにをやらかすかわからないレベルのアホの子のようだ。マスコットキャラとしては大いに期待ができる。
ルナちゃんが引き起こしたトラブルをマロンちゃんが尻拭いする構図しか見えないのが悩ましいところ。

彼女たちが今後の話、そしてアニメでどのように描かれているか注目です。
アニメでは役回りからして艦橋要員の6人がメインキャラクターになり、登場するカットも多くなる傾向にあるようですが、漫画版の1巻では主人公のミケちゃんも脇役級、それ以外のキャラに至ってはチョイ役級の扱いです。まるで異なるアプローチなのが面白いですね。
というか、マロンちゃんのポテンシャルが高すぎて、ミケちゃんの主人公オーラがすっかり霞んでいます。
公式のコミカライズ作品のはずですが、少なくとも第1巻に関してはスピンオフ作品と思ったほうがしっくりきそうです。

また、少し気になる点を余談になるかもしれませんが挙げておきます。
  • 入学前からミケちゃんは銚子沖でスキッパー(水上オートバイ)に乗っていることから、入学に合わせて長野県松本市から出てきたのではないようだ。アニメでは幼馴染のもかちゃんとも久しぶりに会った描写もあったため、中学の頃にはもう引っ越している可能性も高いと思われる。
  • 公式サイトのキャラクタープロフィールで、杵崎姉妹の出身地は【久里浜港所属・和菓子屋船「杵崎屋」】とあるが、入学直前でも銚子市にいるマロンちゃんとクロちゃんの2人と友人関係であり、銚子沖にいたミケちゃんが買いに来ていたりすること、マロンちゃんが横須賀の学校に入学する希望がある事を聞いて横須賀が遠方であるかのような発言をしていることから、、入学前は銚子港に所属し、入学に合わせて家族で久里浜港に移籍してきた可能性が高い。
  • 上記が正解なら、九十九里浜の北端よりもさらに北に位置する銚子港まで、同じ千葉県内とはいえ東京湾に面する内房の袖ヶ浦市から納品に来ていると思われるミカンちゃんはどうしているのだろう。現実の海路だと大きく遠回りとなるが、水没した世界だと銚子市と袖ケ浦市は最短距離で到達できる海路となっているのかもしれない。もしくはミカンちゃんも銚子に引っ越していたのか。
  • 以上のことから、はいふり世界では銚子が海防や海運などの重要拠点になっているのではないか。アニメで水没した日本全域が描かれていたが、銚子よりもさらに東に基地のような構造物が見えるような気がしないでもない。
  • つぐちゃんとめぐちゃんは元日の時点で友人のようだが、つぐちゃんは横須賀の神社の娘で、めぐちゃんの出身地は富山県。めぐちゃんはこの学校へ入学するために越境してきたのではなく、以前から引っ越してきていたようだ。
  • つぐちゃんの神社は「横須賀市内の諏訪神社」とされるが、漫画では特定できるような描画はなされていない。ただし「大きい神社」と言っていることから、横須賀中央駅に隣接する「諏訪神社」ではないかもしれない。また、シロちゃんが参拝していることから「諏訪大神社」である可能性も捨てきれない。大きさで言えば「大津諏訪神社」が第一候補に上がってくるが、はてさて。
  • 阿部かなり先生が描いているだけあって、ちょくちょく太ももフェチアングルが入っていてとても良い。
  • 阿部かなり先生が描くヒメちゃんが綾波に見えてつらい。それでいて敷波っぽい娘がいないのが残念でならない。シキナミン成分をください。(特型駆逐艦娘提督特有の苦悩)