シュトロハイム氏曰く「ドイツの科学力は世界一」なのですが、世界初のダイナミック型ヘッドホンが開発されたのは1937年。Eugen Beyer氏によって開発されたそうです。
オイゲン……プリケツ? いいえ違います。そちらはまた別の記事で触れるかもしれませんのでお楽しみに。

そのEugen Beyer氏が設立したのが「beyerdynamic」社。
社名にもなっているあたり、ダイナミック型のヘッドホンに関しては他社に負けられない技術を持っているのでしょう。

今回紹介するヘッドホン「T1」は、2014年現在で同社のフラッグシップモデルであるヘッドホン。同社の技術の粋を盛り込み、新たに開発された『1テスラ(1万ガウス)を超える強力な磁束密度を生み出す』とされる【テスラテクノロジー】が最高クラスの原音再現力をもたらす――とされています。
これを書いただけでは製品紹介ページの受け売り、引用でしか無くレビューにはなりませんので、以下個人的なフィーリングでのレビューを行っていきます。
9月に購入して約3ヶ月、エージング期間を経て様々なハイレゾ曲も吟味した上でのレビューですので、的外れな事は書いていないと思いますのでどうぞよろしくお願いします。
ちなみに本機を接続している機器は、以前レビューした「JADE casa」コンビです。こちらの特性も加味した上でご判断ください。

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まずは文章で伝わりにくい、本機のデザインや装着性などの要点を、写真を見ながら確認していきましょう。

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ケーブルは3mと、余裕のある長さです。スタジオでの利用を想定して設計されていることもあるのでしょう。ある程度の範囲であれば、装着したまま歩き回れます。
左右それぞれのハウジングから、独立してケーブルが出ているのもポイントです。そのケーブルが、プラグのところまで2本独立して届いているのが見た目にもわかります。プラグこそアンバランス接続ですが、ケーブルはバランス接続ですから比較的容易にバランス化が行える、ということですね。
市販モデルはバランス化されての販売はされていませんので、ヘッドホン出力の付いている機器との接続は、ごく一般的な6.3mm径の3極フォーンプラグによって行われます。
ただ、ポータブル機器を中心に最も普及しているミニプラグと呼ばれる3.5mm径との変換プラグは付属しておりません。多くのヘッドホンは、ケーブルの末端が3.5mm径となっていて、そちらに6.3mm径の変換プラグを取り付ける仕様となっていますが、こちらのヘッドホンは最初から6.3mm。
その理由のひとつは、このヘッドホンが3.5mmミニプラグを実装する機器にはマッチングしない可能性が高いからでしょう。
そこで、仕様を確認するために、パッケージ箱の裏面を見てみます。

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購入した後に箱を見て確認するのでは遅いのですが、そこには購入前から注意すべきである数値が記されています。

impedance ........ 600Ω

フォーンプラグはその名の通り、元は電話交換機用に開発されたプラグ規格です。当初は文字通り、つないで欲しい回線へつないでもらうために電話交換手が抜き差しをするプラグでした。
そこで使われていた回線ケーブルのインピーダンスが600Ω。
これがベースとなり、フォーンプラグとケーブルを流用して今に至る音響機器も、業務用を中心に600Ωが基準となっているようです。
機器間にはインピーダンスマッチングが行われているのがベストな状態であるので、機器側の出力コネクタが600Ωであるならば、接続するヘッドホンも600Ωであることが好都合と言えます。
ただし、それは業務用としての利用の場合。

一般の趣味用オーディオ機器には、600Ωなどという高いインピーダンスに適合するデジタルアンプを内蔵した機器は限られてきます。
アンプが搭載されていることをハッキリと掲示しているような機器でなければ、600Ωのヘッドホンを駆動しきれないでしょう。
ヘッドホンの駆動力については、別の記事にまとめてありますのでそちらをご参照ください。
おおよその3.5mmミニプラグコネクタを有する機器は、600Ωを扱いきれないと思いますので、6.3mmフォーンプラグのコネクタが付いているクラスが妥当となるでしょう。もちろん3.5mmミニプラグのみの機種でも600Ω対応を明記しているものであれば問題ありませんし、逆に6.3mmフォーンプラグだからといって600Ωが駆動できる確証があるわけでもありません。このヘッドホンを購入検討するのであれば、まずは接続する機器のヘッドホンコネクタが600Ωのヘッドホンに対応するのかを確認してからにしましょう。もしも対応していないのであれば、別途対応するアンプの追加が必要になると思ってください。絶対に必要とまでは言い切れませんが、この高級なヘッドホンを購入しても、その本来出せるはずの音が出しきれず、結果として価格に見合った満足感は得られないかもしれませんので。アンプの駆動力不足により、このヘッドホンの評価を下げてしまうのは残念至極です。ぜひ駆動力のあるアンプを通して、本来の音を聴いてリスニングを楽しんでもらいたいものです。

もうひとつ押さえておくべきポイントは、セミオープン型であること。日本語では半開放型となります。
つまり、音が外に漏れまくるってことですね。屋外での使用は向きません。もちろんこの価格帯のヘッドホンを装着しながら公共の場で聴く人はそう多くないでしょうし、前述のとおりポータブル機にはやや厳しいインピーダンス条件のため、心配することはないのかもしれませんが。
宅内でのリスニング用と限定した方が良いでしょう。

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外出先で使いたい、と言っても、移動中ではなく宅内に持ち込んで、ということであれば付属のアルミケースが役立つかもしれません。
付属とはいえ、購入した箱を開けると中にはこのアルミケースしか見えません。

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アルミケースを開くと、このようにT1が収納されています。
すごいですねこのスポンジの厚み。大事に扱われています。それだけ高級な品ということでしょう。
「T1 CERTIFICATE」なる「このヘッドホンが当社の誇るT1であることの証明書」と言わんばかりの冊子まで封入されています。ページを開けばT1に盛り込まれた技術を謳った自信ありげな文が記載されているのですが、証明書となっていますのでここで公開はしません。購入した人だけが見ることを許される、beyerdynamic社から送られた特別な感謝状だとしておきましょう。

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特別な印はヘッドホン本体にも刻印されています。
No.の後に記述された5桁の数字。おそらく通し番号と思われるシリアルナンバー。
この数字が小さければ小さいほど、世界にこれだけしか存在しない機器のひとつが手元にあるんだ、とコレクター欲を掻き立て満足感に直結する魔法の数字となります。
この写真では下二桁を消しています。少なくとも2万3百台は存在することになるようですね。意外と多い?
でも、世界規模ですからこんなものかもしれません。

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改めてプラグを確認。
誇らしげに刻印された「NEUTRIK」の文字。オーディオ業界ではもはや揺るがぬほどの高い評価を得ている「ノイトリック」製のプラグとなります。ノイトリックは、beyerdynamic社があるドイツと同じドイツ語を公用語とするリヒテンシュタイン公国の会社。オーストリアにも隣接し、バロックの時代より続く音楽の中心地です。

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その誉れ高いロゴが与えられたカバーを捻って外すと、ケーブルの芯が顔を覗かせます。
バランス接続のプラグへ改造を希望する人は、ここから先をあれこれすればいいでしょう。

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このヘッドホンの売り文句である「テスラテクノロジーで作られたドライバー」は、ハウジングと正対するのではなく、やや前方に向かって傾斜して取り付けられています。これによりヘッドホンながら、やや前方定位に感じられるようになっているのでしょう。距離が距離だけに微々たるものでしょうが。
ベロア生地が使われた柔らかくふかふかのイヤーパッドは6cm程度の直径があるため、よっぽど大きな耳でない限りは楽に収まり、圧力により耳に負荷が掛かることはないでしょう。長時間のリスニングも安心です。

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ヘッドバンドとハウジングの距離を調整するのは、Made in Germanyの刻印が入った部品からハウジングを支えるフレームの根元を引っ張り出す形で行います。

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最大に引っ張り出すと、片側で約4cm、両側合計で約8cmの調整が可能となります。ストッパーの窪みは6個見えますので、7.5mmずつ調整できると考えて良いでしょう。



さて、肝心の音ですが、接続する機器によっても特性が変わってしまいますし、主観が入ってしまうので参考にするには他のレビューもご覧頂くのを推奨しますが、傾向としてはこのようになるでしょう。

  • 解像度、分解能は非常に高い。楽曲に納められた音を聴き漏らしたくないのであれば選択肢に入れたいヘッドホン。
  • 繊細でクリアで癖は少ない。モニター用として使える。しかし決して抑揚が感じられない平坦な音ではなく、アンプの性能が高ければ重厚に響くし、キレの良いアタック感もあり、聴いていてつまらない音ではない。
  • アンプの性能が低ければ、眠くて暗い音になりがち。アンプの実力がハッキリと出てくる。接続する機器を選ぶし、接続する機器によって大きく表情と特性が変わると言っても良い。
  • セミオープン型ならではの音のヌケの良さも特筆。音場の広さは並ながら、音が分解しつつしっかりと定位するので、録音の状況が想像できるような臨場感が得られる。
  • クラシック、ジャズのような密度の高いサウンドから、軽快で透明感の高いポップスまでなんでもこなせる万能機。ただ、鳴り方が素直すぎて単調な音は単調にしか聞こえないため、演奏パートをデジタルサウンドで賄っている楽曲はデジタルっぽさが色濃く出すぎて、あまり向かないかもしれない。けれどもデジタルに特化することで、正確にビートを刻みつつ細かく音を弄っているハウスミュージックなどはむしろ合っているかも?
  • 楽器の生々しい音の再現が得意で、周波数帯域もほぼフラットに出るので、ボーカルが前面に出てくるヘッドホンが欲しい人には向かないかも。ボーカルと楽器がどちらも出すぎず調和のとれたサウンドが好きな人にはマッチしそう。
  • きわめて原音に忠実な音が出るので、レコーディングやマスタリングの個性がそのまま感じられる。マスタリングしているエンジニアの志向が表れるので、レーベルはもちろん、エンジニアの指名買いをしたくなってくるかもしれない。
  • 高音も低音も満遍なく細かい音が出るので、音量は大きくしなくても充分楽しめるかと。結果として聴き疲れしにくいと思う。
  • ぜひ性能の良いヘッドホンアンプを介して聴いてください。
音場の広さよりも解像力の高さを求めるワタクシにとっては間違いなくベストマッチしてるヘッドホンなので、褒めちぎっているような気がしますが、素直な感想です。この価格だけのポテンシャルはあると感じました。



そしてなんと、この記事を掲載した最中である2014年12月21日から2015年2月15日までの約2ヶ月以内に購入した人には、実質1万円のキャッシュバックとなるQUOカードプレゼントキャンペーンもやっているようです。
国内代理店のティアック(TASMAM)の商品ページから応募用紙がダウンロードできます。
そして何より、この記事をキャンペーン期間中にご覧になった方は、ぜひ下のアフィリエイトリンクを直接クリックして購入してください。
とアフィ厨丸出しのコメントをしてレビューを締めくくってみます。