もしもこのブログをご覧頂いている方に「キャノンって?」と質問をしたら、カメラのメーカーだと答える人が多いでしょう。
長らく写真関係を扱ってきただけに当然でしょうが、そうでなくても、日本人の多くは、カメラ事業を主とするCanon社を思い浮かべると思います。

しかし残念ながら、カメラメーカーの会社名は「キヤノン」です。ヤは大文字です。残念でした。

なんて揚げ足を取るような話はどうでもいいのですが、こちらで取り上げる「キャノンコネクタ」のキャノンは、やはり会社名ではありますが、キヤノン社とは異なるアメリカのメーカーで、綴りはCannonです。カノン砲のカノンと同じ綴りですね。
たいやきうぐぅ少女の出てくるカノン(Kanon)とは違う綴りです。そっちはドイツ語の音楽用語です。

キャノンコネクタは、端子名としてはXLRコネクタと記載されていることが多いようです。記述は異なっても同じ端子を指します。音声用の端子として主にプロフェッショナル向けの機材では標準的に使われていて、マイクロフォン、ミキサー、高級オーディオ機器などの接続用として普及しています。

一方、音声用の端子としてより広く普及しているのは、RCAピンジャックや、フォンプラグ、ステレオミニプラグなどです。XLRは見たことがないという人も少なくないでしょうが、オーディオ機器をはじめAV機器全般(テレビやDVDデッキなど)の接続を行ったことがある人は、特にRCAピンジャックとステレオミニプラグはおなじみでしょう。

キャノンコネクタ3


上の写真では、右からステレオミニプラグ、フォンプラグ、RCAピンジャック、XLRコネクタとなります。プラグ、ジャック、コネクタ、端子と色々な呼ばれ方がありますが、これらも言い回しが異なるだけだと思っていいでしょう。厳密にはフォンプラグとステレオミニプラグも口径の差こそあれ同一の規格です。

キャノンコネクタは、ステレオミニプラグなどと比べてかなり大きいです。プロフェッショナル向けですから、太いケーブルも適用できるように余裕を持った作りになっているのでしょう。最低3本の線を通す必要がありますので、必然的に太いケーブルとなります。ただし、用途やグレードによって1本の線を太くしたり、1つの端子に複数の線を接続して伝送力を上げるような場合もあるため、規格と太さが比例するとは一概には言えません。

では、カノン砲を軽々と扱う事で有名な暁美ほむら氏に持っていただきましょう。

キャノンコネクタ2

キャノンコネクタ1

そしてこのドヤ顔である。

特に、持たせる必要はなかったように思いますが、キャノンコネクタが他のコネクタに比べて大きいことはお判りいただけたと思います。


では、具体的に解説していきます。
まずは接続対象が似通っているRCAピンジャックとキャノンコネクタの比較をしてみましょう。

XLRピンアサイン

RCAピンジャックは信号を伝送する「HOT」を中央のピンに通し、周りの円がGND(電位差0Vとなる線)です。
対してキャノン(XLR)コネクタは、AES規格では1番がGND、2番がHOT信号、3番がCOLD信号です。
COLD信号。これを有するのがキャノンコネクタの特徴です。
HOTから送られてくる信号は、COLDに戻って再び機器に入ります。
ここでポイントになるのは、COLDとなった信号は波形が反転した逆位相のものであることです。これを「差動信号」と言います。

ノイズキャンセリング概念
ケーブルを通る信号には、大なり小なり必ずノイズが混入してしまいます。
HOTとCOLDは隣り合っている線なので、ほぼ同じノイズが乗ってきています。そのため、戻ってきた逆位相の信号には、これからHOTに送り出される信号に乗るノイズが乗っている言えるので、COLD信号から位相をさらに逆転させて本来の音声信号を一致させつつ、逆位相となったノイズ部分だけを相殺させて消滅させるのです。
この辺りの概念図は、島村楽器さんの用語解説ページに画像付きであります。こちらの方が判りやすいですし、ワタクシにはこれ以上判りやすい図は作れそうになかったので、これ以上の概念を理解するにはそちらを参照ください。

この性質を利用したノイズの消音技術は「ノイズキャンセリングヘッドフォン」にも利用されています。こちらはマイクで周辺の音を拾いながら、音声の波形と同時に周辺の音の逆の波形を出力し、結果として周辺の音が聞こえなくなるというものです。


ちなみにこのXLR端子とRCA端子は、デジタル音声ケーブルとしても利用されていて、XLRは「AES/EBU」として、RCAは「S/PDIF」として規格化されています。
S/PDIFの方が一般に馴染み深いと思いますが、こちらもやはりRCAが一般に広く普及しているため低価格帯から幅広い機器に搭載されていて目にする機会が多いのであって、実はAES/EBUの方が先行して策定された規格で、S/PDIFはAES/EBUの規格をRCAやTOSLINK(光Optical)でも利用できるように改変した規格だったりします。アナログのXLR接続と同じく、AES/EBUも業務用の機器や高級帯への採用が主となっています。
デジタル接続なのでステレオ信号でもそれ以上の多チャンネルでも、ケーブルは1本だけとなります。原則としてはアナログ用とデジタル用は共用できるようですが、伝送する周波数や密度が大きくなるため、デジタル信号用を使うのがベターのようですね。これは電話線のADSLに似ているかもしれません。