視覚情報以上に聴覚情報は曖昧で、個人差があって、プラセボ効果に揺り動かされやすく、体調や気分によって印象がブレやすく、そのような聴覚情報に頼って上質を目指すオーディオ機器の良し悪しを測るのは個人で楽しむだけならともかくとして、好みも違う他人に伝えるため評価を行いレビューをするのは危険極まりない行為だと、今この時でもそう思っています。
高級帯になるほどオカルト扱いされる分野でもありますし。
視覚情報だからある程度は信じられるし、何よりも写真というほぼ現物そのものをモニタを通じて掲示できる、フィギュアやカメラ機材のレビューなら、感覚のズレがあっても閲覧者が実際に画像を見ることで差異を吸収できるからセーフ。でもオーディオ関連は個人の感覚で得たものを文字情報に置き換えることしか出来ないから差異を野放図にするだけで限りなくアウトになりかねない。だから個人的に趣味にしていたとしてもレビュー記事は書くまい。今、この時までそう躊躇していました。

でも先日の記事で、これからはオーディオ記事を書かないとブログの更新ネタが無いから後には引けないって書いてしまったので致し方ありません。

などと自分を納得させるようでいて、その実は閲覧者に責任をなすりつけるような、いともたやすく行われるえげつない行為を明示しながら始まりました、始まってしまいましたオーディオ機器のレビュー第一弾。
いえ、ワタクシ自身に高級オーディオ機器を買い求める経済的体力はそれほどございません故、2桁を数えるほど続く可能性は薄いですが、ここに記載させて頂きます。先人たちの遺した至言を号砲にして。

――買わずに後悔するぐらいなら、買って後悔すべし。

そんな決意と共に先日買い揃えたオーディオ機器を、紹介がてらレビューしてまいります。

jade casaレビュー1
ある程度の価格帯の機材を購入する上で、もちろんスペックは目標の水準をクリアしている事が大前提となりますが、購入してから「自己満足」の度合いを一定以上に保てるようにするため、自分自身に対する言い訳が出来る要素を色々と収集してから購入するようにしています。
最終的にはフィーリングなんですが、メーカーの製造コンセプトや背景、想定している利用シーン、組み合わせのバリエーション、本質を反映しようとする設計思想、既存ファンの声、名称の響きや奥深さ、ネタに出来そうな要素、一見するとマイナスに捉えられそうな謎のこだわり、調べているうちに自分の理想や思想に合致してく感覚、欲望の矛先がコンパスのようにピンと向く瞬間の到来、なぜか性的な快感に似た何かを想起させられるポテンシャル…………
もちろんそれらをことごとく兼ね備えた、自分にとって理想の機器に巡り会えることなんて無いのですが、一目惚れのような感覚は機器に対しても訪れることはありますので、その類のフィーリングを決定打として衝動買いに走ることは一度や二度ではない、むしろそんな感覚が訪れない限りはなかなか購入に踏み切れない守銭奴なので、君に会えたことがボクの人生にとって非常に価値のあることなんだよと機器に向かって告白する勢いで買うことにしています。
いや、5000円以上するフィギュアを1ヶ月に数個も購入してはレビューしていた人が守銭奴だと言ったところで誰も信じるはずもないので、一向にして本筋に辿りつけなさそうな流れはこの辺りで断ち切ります。
この製品のレビューを探しに検索で辿り着いた方には、冒頭から蛇足がてんこもりで一向に肝心のレビューが始まらなくてイライラさせてごめんなさい。職業病で、どうしてもストレステストしたくなっちゃうんです。


さて冗談とも本気とも付かない前置きはこのくらいにしておいて本題です。
今回のレビューはORBブランドの「JADE casa DSD」と「JADE casa」の2機種になります。

名称から明らかですが、シリーズ製品です。デザインコンセプトも統一されています。
後ろにDSDと付くか付かないかの違いだけに見えますが、実際の用途は大きく異なり、共通する機能はありません。メーカー自身がこの両製品を組み合わせて使うのを推奨しているぐらいです。
種類としては、前者が「DAC」(Digital to Analog Converter)で、後者が「ヘッドホンアンプ」です。
発売したのは後者(ヘッドホンアンプ)のが先で、2012年10月。前者(DAC)は2014年7月で、2年近くの時を経てのシリーズ製品追加となりました。
ちなみにワタクシ自身の購入時期は、後者が2013年1月、前者は2014年9月です。どちらも発売からそれほど経っていない、この手の製品の評価はそれほど数が集まっていない頃です。先述の通り、フィーリングが合う製品が出たから買った、って事ですね。
ヘッドホンアンプは、たまたま持っているシステムがアナログ出力に特化していたものであり、ならばアナログ入力のみに特化していて、それでいてサイズが大きくそれなりの金額のものならスペシャリティ仕様だけに中途半端な音は出さないだろう、と確信めいた判断をしたからです。正面の液晶画面にはロゴの表示しかされないという謎仕様も自分好みでした。この謎のコダワリはイカしてるなと。
購入後に色々と聴いてみましたが、再生機のアナログアウトがイマイチなのか、再生機に搭載されているアンプが優秀すぎたのか、投資に見合った差は感じませんでした。確かに音の厚みは増しましたが、期待したほどの解像感向上を感じませんでした。使っているヘッドフォンはオーテクの「ATH-AD1000」(当時利用開始5年目)です。

まだこのヘッドホンアンプの実力は出し切れていないはず、と確信めいた感覚はあったものの、他に投資する趣味が重なっていたこともあり環境の増強を行うことをしないまま、今回のDAC導入までの約2年間を「まれに試運転する」くらいにしか使っていませんでした。

そしてDACを導入。

世界が変わりました。

美音っ・・・・!  圧倒的美音っ・・・・!

このヘッドホンアンプ「JADE casa」は、実力を出し切っていないというよりは、音源(プレイヤー)の実力相応の音を素直に出しているんだなと理解しました。

何も足さない。何も引かない。ウイスキーが飲みたくなるそんなフレーズが頭に浮かびました。

機器の出す音に「濃い目の味」が付いていると、組み合わせ次第で「特徴を潰し合う」なんて残念すぎる結果となることが有ります。
「綺麗に鳴る」ことは全ての音響機器に共通したテーマでしょうが、それでもメーカーの「売り」になることも多々ある「特有の味付け」を行う機器が多い印象が有ります。それは長年の固有ファンを抱える、デジタル化する前からブランド力のあるオーディオメーカーほどその傾向が強いように思います。
対してORBブランドのオーディオ機器を製造販売しているジェーエイアイ株式会社は、会社概要に記載されている文を見ると、元はオーディオ機器ではなく産業用電子機器の設計・開発・製造を行うメーカーで、オーディオ部門は既存の技術を活かした後発であることがわかります。
産業用の電子機器は安定して確実な動作が行われるのが最重要視される分野ですので、ノイズの発生を抑えた回路かつ安定した電力供給が生み出す澄んでいる音を出すのが特徴となるのは頷けます。
いかにもデジタル世代の音には相性が良さそうです。
ただそれだけに、自分と同じように「思ったほど変わらなかった」と印象を持つ人も少なくないようで、全体的にはクオリティの高い澄んだ音との評価が高いようですが、中には「温かい音」だとか「暗い」だとか「もっさりしている」だのという意見も多く見られるようです。おそらくこれらは上流のプレイヤーなどの作り出す音の特性か、それらをつないでいるケーブルか、ヘッドフォンの特性からくるものが主たる原因でしょう。
そう思えるほど、同シリーズ(JADE casa)のDACと組み合わせた音は、PCから受け取った音源の持つ色をそのまま出しきっているような印象が有ります。
ちなみに、この評価をするのに用いたヘッドフォンは、すべての領域でポテンシャルが高い万能機とも呼ばれるbeyerdynamicのT1です。

もちろん好みによって合わない場合もあるでしょう。音源の持つ特性をストレートに出し過ぎるので。
ただ、音源をマスタリングしたエンジニアが意図した音の鳴り方をそのまま聴けているのでは、と感じるので、単に楽曲が持つ魅力だけでなく、マスタリングの「細かすぎて伝わりにくい調整の妙」まで楽しめているかのようで得した気分になれます。


と、ここまで写真がなく文章ばかり書いていて見た目に抑揚がなく目が疲れてしまいそうなので、解説を兼ねて参考写真を載せていきましょう。

jade casaレビュー2

ヘッドホンアンプとDAC、それぞれの端子です。上がヘッドホンアンプ、下がDACですね。言わずもがなですが。
当然、主に熱を持つのはアンプの方ですので、重ねる場合はアンプを上にします。
このシリーズの、人によっては欠点と感じるのは、対応する規格の数が少ないことです。DACとアンプ共に光デジタル端子はなく、アンプのデジタル入力もありませんのでアンプはDACを兼ねません。DACの出力もアナログRCAしかなくアンプを兼ねません。完全にスペシャル構成です。この機種1台よりもずっと小型の筐体ながら、ヘッドホンアンプとDACを兼ねた製品は巷にいくらでもあるので、ここまで割り切った機能の製品は買いにくい人もいるでしょう。既存の機器とのベストな接続方法が食い違う可能性があるため、この手の機材の入門用としてはハードルが高そうです。
それだけに洗練されたスペシャルな音が発生するのだろうと、実際に使っているボクは思っています。

ちなみに、この手の機材の購入を検討している人の多くが判断材料のひとつとしている、DACのDA変換ICやらアンプのOPAMPやらの情報は、メーカーの公式ページに書いてあるのでそちらをご参照ください。それらの情報をこちらのレビューにも書くと、やれこのチップの特性はなどと余計な詮索をしてしまいたくなって評価がブレてしまいかねないので、敢えて書かないことにします。
バーブラウンと新日本無線とシーラス・ロジックのハイエンドクラスのチップなんだからそりゃそうなるよと。

jade casaレビュー4

RCAの接続には「Zonotone」の「6NAC-3000 Meister」を使っています。
ゾノはイケメンでキャプテンシーがあるってはっきりわかんだね。

jade casaレビュー3

筐体は青い(オーシャンブルーを選択)し、アンプは結構熱くなるので、サイズ比較も兼ねてそのイメージに合致するキャラのフィギュアを上に置いてみました。
もちろん焼き鳥が製造できるほどは熱くなりませんが。
「良い機材ね。さすがに体温が高揚します」

jade casaレビュー5

実際に設置して曲を再生している状態の画面表示はこんな感じ。
ヘッドホンアンプに出るのは先述したとおりロゴだけなので期待しちゃいけません。二重の意味でディスプレイです。
DACに出るのは現在の再生周波数。一般にはプレイヤーに表示されるので、ここに表示される必要性はそれほど感じませんが、ロゴを出力するだけに比べると大きく進化した気がしてしまうのが心憎いです。

jade casaレビュー6

ヘッドフォンをつないだところ。
ここぞとばかりにT1持ってるぜアピールです。
ところで、AKGのK701は澪ホンだと騒がれたのに、このbeyerdynamicのT1はなぜ「つるぎホン」だと騒がれなかったのでしょうか。見た目年齢は澪より低そうに見えても実年齢がアレなのがいけなかったのでしょうか。名実ともに女神なのに。いや、余談でした。


音の特性は前述したとおり、音源の特性ならびにヘッドフォンの特性をそのまま出し切るような、澄み渡った素直な音。曲ごとにガラリと印象を変え、この音源の制作者は次の曲をどんな音で聴かせてくれるんだろうと楽しみになります。制作者に感想を伝えたくなるくらい真に迫る音ですね。
この構成だと標準でも充分すぎるくらい良く鳴ってくれるので、このヘッドフォンアンプの大きな特徴であるダイナミックモードへの切り替えを行っても、極端に特性が変わることはありません。忠実に低音域を持ち上げてくれます。

最近のハイレゾ対応を謳うDACでは当然のように対応しているDSDですが、こちらの機種も2.82MHz(DSD64)、5.64MHz(DSD128)のサンプリング周波数のDSD再生に対応しています。評価できるほど手元にソースがないのでまだ何ともコメントできないのですが。

このDACをWindowsで利用するには専用のASIOドライバが必要なのですが、CDなどは付属しておらず、公式サイトからのダウンロードが必須です。つまりインターネット接続が可能な環境での入手が必須です。PCで使うこと前提の機器ですから、今のご時世で個人利用のPCがインターネットに繋がっていない可能性はかなり低いでしょうが、ちょっと思わぬところで制約がある感じなので見逃せない注意点ですね。


色々と書いてきましたが、JADE casaコンビの総括をしますと以下の様な印象でした。
  • 徹底的にノイズを排除した結果と思われる突き抜けるようなクリアな音。
  • 爽やかさがありながら重厚さもしっかり演出できる懐の深さがある。
  • 音の粒立ちや分離も良く、しっかりと解像している。
  • 特性はRJ氏並にフラットであり、音源とヘッドフォンの特性がそのまま出てくる。
  • よって、不得意なジャンルは無いと思われる。逆に言えば、特に相性のいいジャンルも挙げられない。結果、特定のジャンルばかり聴いていて良くも悪くも尖った音が好きな人には満足に至らないかもしれない。
  • 上記の結果、他の購入者の使っているヘッドフォンやら上流の質やらの影響によって評価がブレブレになっているっぽい。
  • 翡翠は従順で、何事もそつなく出来る娘。さすがナイチチゲール秋葉様付のメイドである。(JADEとは翡翠のことなのでつまりあなたを犯人です)


ちなみに評価用音源として一番重宝したのは、マクロスFの「娘フロ。」ハイレゾリマスター版の18トラック目「The Target」です。ワルシャワ国立フィルハーモニー管弦楽団のガチオーケストラです。そしてこれの直後に14トラック目の「ニーンジン Loves you yeah!」を聴くとその音数の落差に妙な感動を覚えます。


あと、DACにはフィルタ機能があるんですが、使いどころがイマイチわからないままなので今回は触れないままとします。



以上、ちゃんと伝えられているのか怪しいですが、JADE casaコンビのレビューでした。