〈古典部〉シリーズの中で最も大きなトピックであった、カンヤ祭を扱ったクドリャフカ巻も終了し、いよいよラストが近づいて来ました。順当に行けばこのまま回ごとに違うエピソードを扱っていき、年度が変わりホータロー達の高校一年生ライフが終わるタイミングで幕引きとなりそうです。

今回の「心あたりのある者は」も、一回で起承転結を迎える単発エピソード。昨今のアニメとしては原作が地味なテイストの作品だと言われている中でも、特に地味な印象のあるエピソードです。
これまでの回で千反田さんの可愛らしさに、その魅力に気付いているかそうでないかで大きく印象の変わる回でもあったと思います。千反田さんのおかげで、地味な印象がやや彩られたように感じました。

それでもなお、地味さは拭えない回です。なんたって、今回は実質的にホータローと千反田さんしか出て来ません。いくらダウナー系主人公の中でもなかなかの人気を得つつあるホータローと、その清々しいまでの実直さとお嬢様らしいマイペースぶりが親しみやすさを存分に発揮している千反田さん。確かにこの二人の掛け合いだけでもファンとしてはお腹いっぱいでしょうし、むしろこのまま一線を越えてしまう展開を期待してしまうところでしょうが、原作に忠実なアニメ化だけにそのような展開がある事など期待できるはずもなく、ラブコメ作品に慣らされた思考が行き場をなくしてやきもきするのがちょっと快感になりつつあるこの頃です。
そうです。この回は男女が二人、狭い空間に孤立しながらも恋愛沙汰の展開に発展せずにただひたすら推理を展開していくお話なんです。これを地味と言わずとして何が地味なのかとラブコメ脳が欲求不満を訴え出すところなのですが、だからこそこの回は〈古典部〉シリーズの魅力が感じ取りやすく、〈古典部〉シリーズの特色を伝えるには良い題材になるでしょう。
誰かから「まだ氷菓って作品を見たこと無いんだけど、面白いらしいね。特に、えるたそってキャラがいいらしいんだけど、まずは一話だけ試しに観てみたい。どの回を見たら氷菓を評価しやすいかな」って話を振られたら、無言でこの回のビデオをお貸ししたいところです。

と、恋愛沙汰の展開は無いと言い切ってしまった手前で言い難いのですが、千反田さんが珍しくホータローを意識する場面がありましたね。
自ら顔を近づけておいて、顔を赤らめてしまう場面です。
原作では恋愛要素を排除しているのではなく、むしろ里志と摩耶花の関係は当初から摩耶花が片想いしている関係であると明らかにされているぐらいであり、その関係が進展しないことをネタにしているぐらいです。逆に言えば、恋愛の駆け引きを展開させるのはこの作品の本筋にはないと意思表明しているかのような感すらあります。
まあいずれ、その件にも触れるエピソードが登場するはずですが。でもちょっと痛いんだよなぁアレは……まあ、沢木口さんの再登場にも期待しているので流されちゃったらそれはそれで残念なんですが。
で、千反田さんが顔を赤らめてしまうシーンの後に、また自ら顔をグイグイと近づけていくシーンがありましたが、こちらでは全く顔を赤くせず、動揺した姿を見せませんでした。この事から察するに、謎を前にして眼の色が変わった千反田さんはトランス状態に達しているために異性を意識する余裕もなくなっていると判断できます。顔を赤らめた時はトランスする前の状態で、意図しなかった接近のために不意を衝かれていた様子でしたし。
千反田さんも年頃の女の子らしい感性があったようでちょっと安心しました。あれだけホイホイと顔を近づけているのにしれっとしたままなんて、男としての魅力がないんじゃないかと不安になってしまいますものね。ホータローも自分を異性として意識してくれたのが嬉しかったんじゃないでしょうか。アニメ版のホータローは、早い段階から温泉に浸かる千反田さんの裸体を思い浮かべてしまうほど意識しまくっていましたし。ホータローの溜まった欲望が開放される時が来るのを願わずにいられません。
しかしまあ、その後にトランス状態になって顔を近づけた千反田さんと、ホータローとの口元のアップは凄かったですね。もうキスしちゃえよ! とテレビの前で叫んでしまった人は多々いることでしょう。

そしてもうひとつ。今回はジト目クイーン摩耶花たそがいなかったからその分も担おうとしたのか、貴重な千反田さんのジト目を頂戴することが出来ました。これはお宝映像です。お嬢様のジト目とか至宝です。
しかも、説明を省くのが常套手段である千反田さんからそれを咎められるとか理不尽過ぎて、お嬢様から女王様にランクアップしたかのようにすら思えました。アホの子っぽく見えて、しっかりと理にかなった行動をする千反田さんにしてはこれまた珍しい事です。まあ、他人の事は良く意識して理解を深めようとしているのに、自分の事はからっきし意識せずに本能の赴くがままに行動してしまっている様子のある千反田さんらしいといえばらしいですが。
でも、摩耶花たそのジト目や、入須先輩の底冷えする視線も見られないのは寂しい回でしたね。さすがに全ての役回りを千反田さん一人に背負わせるのは荷が重過ぎます。

本筋の推理部分を含む全体の印象としては、アニメ放映初期の構成に近かったですね。演出も例の人形劇みたいな説明シーンが軽妙な雰囲気を醸し出していて、ネタとしては現実に即した重い内容だったにも関わらずアニメーションとして気楽に見ることが出来ました。原作ほどはシュールなギャグでコントしてませんでしたが、千反田さんの顔芸と人形劇アニメによってかなり和みました。
ただ結果としてこの回が気に入った人たちから、里志と摩耶花の不要論が噴出しないことを願うばかりです。


さて、次回は年が明けてお正月のエピソード。
千反田さんの振袖姿がお披露目されます。
さっそく予告でお披露目されてしまっていたのでちと残念ですが、それだけじゃなくて摩耶花たそのバイト巫女服姿と、十文字かほさんの本職巫女服姿が拝めますから楽しみは尽きません。
そして、今回よりもなお小さな空間に、ホータローと千反田さんが二人きりで……期待は尽きません! わたし、二人のラブロマンス展開が気になります!