氷菓が食べたくなる夏の盛り。
学生たちの活力溢れる行動によって彼らの全身から止めどなく汗が滴り落ちていき、噎せるような濃厚な夏の香りが立ち込める校舎。
――濃厚な香りを求めて、想い人の上履きをクンカクンカしたくなる季節ですね。

というのも、アニメでは生徒が校内で上履きを履いている姿が見受けられるのですが、小説ではスリッパを履いていると明記されており、この変更は「スリッパをパタパタと鳴らして歩くのは過剰な表現に感じられる」とか「スリッパが脱げてずっこけるシーンを描きたくなるから封印した」とかあるのかもしれませんが、やっぱり「上履きのゴム臭共に染み込んだ足の臭さが綯い交ぜになって香ってくると自然と青春時代の記憶を呼び起こされるんだ」というスタッフ内の有識者の鶴の一声が発せられて上履き採用が決まったのだと信じて疑わないワタクシです。

一部の愛好家の方々にしか共感を得ていただけなさそうな話題はこのぐらいで。

今回はクドリャフカエピソードの起承転結で言うところの転に入ってきたところで、ストーリーとしては最も面白い部分。各キャラごとの心に秘めたる想いも見えてきて、真相が少しずつ見えてきて、展開が加速度的に進んでいきます。
秘めたる想い、青春の香り……甘酸っぱくてほろ苦い果実のテイストが広がっていきます。
千反田さんの瞳孔と共に開いていきます。
何度も書いている事なのでもうこりごりだとは思いますが、アニメになって最もこの作品の長所を削ってしまったところは、各キャラごとの心情描写が仕草や表情だけで垣間見える端的なものだけになってしまった事です。
飄々としたホータローの行動を導き出すシニカルながらもユーモアが添えられた思考。千反田さんのどこか浮世離れしたようなお嬢様らしい暢気さと生真面目さが介在した思考。負けず嫌いで健気すぎるのが災いして自分の信念を曲げて他人に屈する事や妥協して我慢する事が許容できなくて対人関係をこじらせてしまう事に葛藤を抱き続ける摩耶花の思考。お調子者でお気楽なスタイルを基本軸に置きながらも優れた洞察力と人間観察力によって事件の真相を引っぱり出すには欠かせない情報を導き出す優れた思考を持つ里志。4名のそれぞれの心のうちを視覚的に文字情報として見る事ができたために、各キャラへの理解度と親密感を増せる機会を得た原作小説に比べて、それらを感じ取る場面も時間も充分に取れないアニメの表現にはもったいなさを感じます。もちろん、不自然に語りすぎること無く、映像表現の中で随所に散見できますのでアニメとして良く処理されていると思います。
ただ今回は、かなりの大きなアレンジが加わっていました。千反田さんと遠垣内先輩が、十文字事件の話題について話し合う場面です。
原作小説では、ホータローに対する千反田さんの評価から始まり、遠垣内先輩へは入須先輩からのアドバイスを解釈した上でしっかりと会話に取り入れる形で利用し、実りある会話の要素として成り立たせていて才女らしい振る舞いをしていましたが、アニメの千反田さんは遠垣内先輩を部室から手を引いて強引に連れ出した挙句、入須先輩の教えを安直に口に出しただけで不審がられるという、到底才女らしからぬ立振舞となってしまっていました。日頃の千反田さんの挙動が、すぐに周りが見えなくなって直情的に行動してしまったり、融通が効かない頭の固い人物像を連想させるからといって、ちょっとこの見せ方には納得がいきませんでした。これじゃ単なるアホの子です。
――いや、個人的にはアホの子も好きなんですけどね。でも、原作の千反田さんが好きなので、このアレンジは残念な思いが強いです。
でもまあ、アニメのキャラとしてはわかりやすく、アニメファンには受けの良いキャラ作りでもありますので、原作ファンの固定観念を捨てればケチを付ける必要もないでしょう。
ぶっちゃけ、えるたそをペットとして飼いたいくらいです。
そう、このアニメは千反田さんではなく、えるたそという別個体として見るべきなのです。えるたそは駄犬可愛い。そうしておきましょう。

それと、気になったのがボカロキャラの扱い。
漫研部員のコスプレ姿として登場していますが、明らかに摩耶花に対して嫌味を毒づく、いかにも性格が悪そうなキャラに割り当てられていて、印象の低下を招いています。もちろんコスプレという前提が明らかになっていますので視聴者が「ボカロキャラってこんなに陰湿な性格をしているんだ」などと勘違いすることはないでしょうが、その明らかなるビジュアルと、表情や言葉遣いが同時に画面と音声で投げ掛けられると、どうしても記憶にはこびりついてしまいます。ボカロの権利者は、このような扱いをするために使用されたのを見てどう思ったのでしょうか。権利者側と製作者側の間に悪い空気を生み出していなければいいのですが。他人事ながら心配です。
いやでも全くの無関係の立場かつ変態的思考を持つワタクシからすれば、ただでさえ天使のミクさんに嗜虐的な視線を向けられたなんてとっても幸福な状況なので、製作者側の挑戦に敬礼をしたいところです。

あと、わりとどうでもいいことでしょうが、摩耶花は湯浅漫研部長の事をアニメでは「湯浅先輩」と呼んでいました。原作小説では「湯浅部長」と書かれています。この小さい差異が何だか気に掛かりました。
この感想記事では、原作小説での呼称を用いて書いています。なので、当初より折木奉太郎の事を、里志が呼ぶ「ホータロー」という記述で統一しています。対する里志はホータローが福部ではなく里志と呼んでいるから里志と書いています。摩耶花も里志が摩耶花と呼ぶからそうしていますが、ホータローが呼ぶ伊原の呼称だとあんまり可愛くないので摩耶花一択です。千反田さんだけはネットでの人気もあって、えるたそと書くことも多いです。理由は前述もしましたが、かなりアニメでキャラクター性のアレンジが入っているので別のキャラとして見ているのも理由です。
苗字で呼んでいたのを名前で呼ぶようになって親密感がアップするエピソードがあるような王道ラブコメを好物としているワタクシとしては、呼称にはこだわりたいところです。
で、話を戻して湯浅部長もとい湯浅先輩が、摩耶花と校舎の連絡通路で会話をするシーン。漫研での客引きPOPを作って掲示したあのしたたかな性格から見た目とは裏腹に腹黒いキャラだと期待していた視聴者にとっては肩透かしを食らったかのように、見た目通りの優しさを覗かせるシーン。上級生らしく諭すような言葉遣いで、部員たちの信頼を集めるに相応しい包容力を感じさせてくれていました。どことなくそのプロフィールから「咲-Saki-」の福路美穂子を想起したのは自分だけではないでしょう。そんなだからもちろん摩耶花は池田ァ!に見えるワケです。さしずめ河内先輩は風越OG久保でしょうか。いや、だいぶ違う気がします。でも摩耶花も池田ァ!も猫キャラ可愛いですね。ええ、千反田さんが犬耳犬しっぽが生えている妄想があったのですから、摩耶花にも猫耳猫ヒゲ猫しっぽが生えている妄想があってもいいはずです。ぜひよろしくお願いします。ワタクシは断然猫派です。でもビスコッティ共和国には住みたいです。

あんまり他のアニメ作品を取り上げると、そちらの感想も記事にするフラグに思われてしまうのでこのぐらいでやめておく事にして、本筋に戻しましょう。
気になったのは「安心院」が出なかった点。これについては言葉遊びの要素があって、文字情報として見る小説だからこそ楽しめるので、ここで出すのは省略した、と見るのが妥当そうです。

そして次回。気になるのは摩耶花と河内先輩のコスプレ第三弾。
摩耶花は予告の映像でお披露目されていました。青い帽子に赤い星印。見るからにこれは原作通り、「七色いんこ」の千里万里子のコスプレです。結果としては二日目のみアッコちゃんに変更されましたが、一日目と三日目は原作通りとなりました。萩尾望都、赤塚不二夫、手塚治虫という錚々たる大御所の作品からコスプレをする摩耶花の実年齢が怪しまれる所ですが、ロリババアが好きなワタクシとしては拒む理由がありません。てかロリババア認定するなよと。
そして河内先輩の方は全く出てきていなかったので不明。原作では女性刑事のキャラとして被る春麗だっただけに、今までの流れからするとSNK作品での女性刑事キャラになる可能性が高まってきました。SNK作品での女性刑事キャラ……いましたっけ?