前回はイベント撮影で実践的に役立つかもしれない「ストロボ」の特性について紹介しましたが、今回もイベント撮影に役立つかもしれない「レンズ選び」の参考資料を提供します。
フィギュア関係のイベントで撮影する場合は、多くの人が「レンズの焦点距離」など気にする事のないカメラ(コンパクトデジカメや携帯のカメラ機能など)で撮影するでしょうし、焦点距離を意識する一眼レフなどのレンズ交換式カメラを使う人も、あらゆる条件に対応するために汎用ズームレンズを使うでしょうし、そもそもこんな事は聞くまでもなく知っているぞ、と言われそうなもので、今回の記事にどれほどの需要があるのか実に怪しい所ではあるのですが、コンデジなどで撮られる方はズーム機能の参考に、デジイチで撮られる方は焦点距離ごとの撮像の違いをおさらいする意味で、はじめてレンズ交換式カメラを使ってイベント撮影をする上にレンズ資産はそれなりにあるというごく一握りに該当する方は持参するレンズ選びの参考になさってもらえると嬉しいです。
ではみなさん、準備はよろしいでしょうか?

\ちぇえええええええん!!!/
Phat 橙 20

いやすいません、今のは以前行ったレビューの使い回しです。
今回の記事では、被写体としてファット・カンパニーの橙を用いることにしました。何故かと云えば、最高に可愛いからです。

――と、また余計な事を色々と書き連ねてしまいそうなので、サッサと本題に参りましょう。
まずは、フィギュア系イベント撮影で使うレンズの焦点距離として一般的にチョイスされる物を使って、この一般的な1/8スケール程度の立ちポーズのフィギュアを、正面から全身をくまなく入れるフレーミングの撮影をすると、被写体までどのくらいの距離が必要なのかを示します。

まずは、手持ちのレンズで「APS-Cセンサーの55mm」(フルサイズ換算約82mm)となる「DA★55mmF1.4 SDM」を使った場合の距離です。

120205 焦点距離画角比較01

だいたい60cmくらいになります。レンズの長さは焦点距離によらずレンズの設計によるので、レンズの端からではなくカメラ本体、つまり撮影者の手の位置として考えます。実際には撮影者がこの後ろ50cm程度後ろまで場所を占有することも意識しておいて下さい。
このくらいの距離は多くのブースで撮りやすいと思います。前に見ている人が1人入って、そのすぐ後ろから撮影するぐらいの距離感。混み合っている場所だとさらに近づきたい場合もありますが、ほとんどの場面で無難なフレーミングでの撮影ができるでしょう。
バストアップで撮影する場合は、この半分以下の距離で撮影することになりますが、そうなると最短撮影距離をオーバーしてしまいピントが合わない場合もあるので、できればマクロ対応のレンズが望ましいですね。バストアップの場合は25cm程度になると思いますので、被写体の手前にアクリルケースがある場合にはケースの前面に当たるかどうかぐらいの距離になるでしょう。手前に人が割り込む隙間はないので、手前の人の頭が横から滑りこんできて視界が潰れることはなく、確実な撮影が行えます。

上の50mm程度のレンズがあれば、大抵の場面で使えてしまいますが、一部のブースでは手前にロープが張られていて、被写体となるフィギュアの飾り台に近づけないように処置をされている事があります。この場合は被写体までに1m程度の距離があり、上のレンズぐらいの焦点距離では被写体が小さく写ってしまうのが限界で、もどかしい思いをしてしまうかもしれません。
そこで続いては、手持ちのレンズで「APS-Cセンサーの100mm」(フルサイズ換算約150mm)となる「D FA MACRO 100mmF2.8 WR」を使った場合の距離を紹介します。

120205 焦点距離画角比較02

部屋の中で撮っているので、いろいろお見苦しいものが見えてしまってすみません。
左の薄ピンク色の紙が当てられているところは、その裏には薄くないピンク系統の物体が潜んでいるのでお察しいただければと思います。
さて、肝心の被写体とカメラの位置ですが、ちょうど1mくらいになりました。これならば、ロープが張られているブースでも被写体が小さくしか写らないなんて憂き目に合わずに済みそうです。
それならばこのレンズを用意しておけば万全となるかといえばそうではなく、こんどはその距離がネックになってきます。
この距離で撮影をすると、ロープが張られておらず、被写体の30cm程度まで寄れるブースでは、間に人が2、3名入れる余裕があり、フレームの中に手前の人の頭や身体が入り込んでしまう可能性が高くなります。
バストアップを撮る場合でも40cmくらいの間隔があるので、手前の人の頭を捉えることになる可能性も非常に高いです。
ブース内に寄り付く人が少ないのであれば対応できるでしょうが、イベントでその心配が無いほど人が少ないのはイベントとして致命的なので、まずそのような事は無いと考えるべきでしょう。


続いて、実際の写真写りを見ていきます。
ここからは画像にExif情報も残しているので、見ることが出来る環境の方は参照してみてください。今回はフラッシュとシャッタースピードの関連性などの焦点距離と画角、絞り値以外の条件は抜きにしているので、シャッタースピードと写り方の差は無いものと思って下さい。

まずは55mmレンズを使った場合。F値3.5のものから。

120205 焦点距離画角比較03

橙がとてつもなく可愛いことは頑張ってここでは触れない事として。
今回もフィギュア(被写体)から30cm程度後方に名刺を付けていますが、完全にボケてしまってその存在が認識できないレベルです。
そして、尻尾がそれなりにボケていることも見ていただけると思います。

続いて同じ55mmレンズで、絞りをF16としたもの。

120205 焦点距離画角比較04

全体的にだいぶハッキリとしてきました。後ろの名刺の文字も認識できます。
実際に撮影する時は被写体意外にも、後ろにある装飾や手前にあるプレートなどを併せて撮りたい場合や、逆にそれらを写し込みたくない場合があるでしょう。併せて撮りたい場合は絞りを小さく絞る(F値の数字を大きくする)方向で、後ろや手前をハッキリと写したくないからボカしてごまかす場合には絞りを大きく開放(F値の数字を小さくする)してみるのがいいでしょう。
フラッシュを焚かずに撮影する場合には、絞りを小さく絞れば絞るほどシャッタースピードがゆっくりとなり、手ぶれを誘発してしまう事になるので、この点も考慮しながらベストの条件を探っていきましょう。

そして次は100mmレンズ。こちらもF3.5から。

120205 焦点距離画角比較05

上半分の写り方はほとんど違わないですが、台座の見える角度が違って見えるのがポイントです。
焦点距離が望遠側(数字が大きくなる)ごとに画角が狭くなり、結果として物体がより平行に近い形として見えるようになります。より平面に近い見え方になると云っていいでしょう。
これを「テレセントリック性」がアップするとか言ったり言わなかったりしますが、まあそんな専門用語的なものは興味のある方だけが調べてくださいな。
これについては、過去に作成した記事「焦点距離と画角」でも扱っていますので、興味のある方は併せてご覧ください。(宣伝)

では続いて、100mmレンズのF16を。

120205 焦点距離画角比較06

ここで注目していただきたいのが、上の点に加えてもう一点。
この写真では判りづらいのですが、後ろの名刺が55mmレンズ以上にボケている事です。
この事についても、過去に作成した記事「焦点距離と画角」でも扱っていますので、興味のある方は併せてご覧ください。(再び宣伝)


で、なんかイマイチ判りづらくないか? もっと前後の奥行きがある他の被写体を選んだほうが良かったんじゃないか? 管理人が橙が好きだからって橙をチョイスしているだけなんじゃないのか? と、ごもっともかつ全てに於いて認めざるを得ない真実を指摘されてしまいそうなので、ここで奥行きのある被写体を用意して再度撮影してみることにしました。
被写体は替えますが、せっかくなので同じ原型師さんの作品で奥行きが大きく、なおかつ画角による写りの差が出やすいフィギュアを選んでみました。
護國殿の魔理沙です。
敵としてちょっとだけ登場する脇役の方が可愛いなんて言わせない。主人公の一角を張ってる証拠を見せてやるぜっ! ってなわけで普通の魔法使いが満を持しての参上だぜ。

先ほどとは逆に、100mmレンズの写真から見ていきましょう。今回はF5.6から4段階の絞りで撮っています。また、ピントは向かって手前にある箒の先端に合わせています。
一文ずつ挟むと比較しづらいので、今回は写真の下に条件を記載していきます。

120205 焦点距離画角比較07
【 100mm F5.6 】

120205 焦点距離画角比較08
【 100mm F8.0 】

120205 焦点距離画角比較09
【 100mm F11 】

120205 焦点距離画角比較10
【 100mm F16 】

次は55mmレンズです。

120205 焦点距離画角比較11
【 55mm F5.6 】

120205 焦点距離画角比較12
【 55mm F8.0 】

120205 焦点距離画角比較13
【 55mm F11 】

120205 焦点距離画角比較14
【 55mm F16 】

そして今回は、更なる比較用として「APS-Cセンサーの35mm」(フルサイズ換算約52mm)の焦点距離となる「DA35mmF2.8 Macro Limited」の写真も用意しました。

120205 焦点距離画角比較15
【 35mm F5.6 】

120205 焦点距離画角比較16
【 35mm F8.0 】

120205 焦点距離画角比較17
【 35mm F11 】

120205 焦点距離画角比較18
【 35mm F16 】

焦点距離が短くなればなるほど、絞り値をそれほど絞りこまなくても全体にピントが合いやすいのが見て取れると思います。いや、そうでもないかもしれませんが、事実としてそうなのでそうだと思っていただけると助かります。
これは短い焦点距離のレンズほど被写体深度が深くなりやすく「パンフォーカス(ディープフォーカス)」が効きやすい、などと言ったりしますが、これまた専門用語的なものなので興味のある方だけどうぞ。
これについても、過去に作成した記事「絞りとピント」の後ろの方で(作例はありませんが)扱っていたりますので、興味のある方は併せてご覧ください。(くどいほどに宣伝)

またもう一点気になる差が出てきたのが、焦点距離が短い=広角のレンズほど手前の物が大きく写り、後ろの物が小さく写る傾向にあることです。近くにある物は位置関係によっては歪んでさえ見えるかもしれません。
これは焦点距離が短い=広角のレンズほど遠近感が大きくなる「パースペクティブ効果」によるところです。
何と、この事についても、過去に作成した記事「焦点距離と画角」で扱っていますので、興味のある方は併せてご覧ください。(とことん宣伝)


冒頭では「レンズ交換式カメラでしか通用しないお話」みたいな書き方をしましたが、以上の事はもちろんカメラ全般に通用する原理ですから、ズーム機能のあるコンデジなどをお使いの方にも参考になると思います。焦点距離が長いものほど、ズームアップしている状態と考えて下さい。

あと、忘れてはならないのは、焦点距離が長くなれば長くなるほど、ズームアップすればするほど、手ブレの影響を受けやすくなります。撮影した写真が、よりブレてしまいやすくなります。
これは、フレームの中に占める画角が狭くなることで、カメラが少しの角度傾けられただけでも、その割合が大きくなってしまうために結果としてブレも大きく撮像されてしまう事になるからです。自動車で高速道路を走った事がある人なら、高速になればなるほどちょっとしたハンドルの角度を付けただけで、低速走行時に比べて大きく揺さぶられてしまう感覚をご存知かと思いますが、まさにそれと同じです。フラッシュを焚かずにシャッタースピードが稼げない(1/30よりも遅くなると起きやすい)場合には、充分に気を付けましょう。

以上、フィギュアのイベント撮影で使えるかもしれない、レンズのお話でした。