この度をもちまして、初めて、いわゆる外付けストロボを買いました。
クリップオンストロボという、ホットシューに取り付けて、カメラ内蔵のストロボ(フラッシュ)よりも大きな光量と、細かな発光設定が行えるアレです。スピードライトとも言われますね。
カメラを購入して、イベント撮影も数をこなしていながら、ここにきてようやく初めての外付けストロボと言うのもおかしな話ですよね。
ええ、まあ、先に「いわゆる」と前置きした通りですが。

一般的に外付けストロボと言って、リングストロボを思い浮かべてもらえないですものね。
一年半程前からリングストロボを実戦投入して、それなりに効力を発揮し、なかなかに満足はしていたのですが、リングストロボはその方式からして「ディフューザーを取り付けることが出来ない」事がネックに感じてきていた昨今でありました。
ディフューザーとは、ストロボの光を減衰したり、拡散する事を目的としてストロボの発光面の前に取り付けるものですが、拡散はいいとして減衰するなんて、字だけ見ると単なる悪化にしか思えませんよね。
ですがコレ、結構重要なんですよね。
強すぎる光は被写体で強く反射し、被写体の色を損ねたり、わずかな凹凸を潰して平坦な姿に見えるよう変貌させてしまいがち。しかも、明るさが距離によって大きく差が出るため、被写体と背景に差があると明暗が付きすぎて違和感が大きくなります。さらには、被写体が立体となると被写体自体の奥行き表現が過剰になって、やはり違和感が大きくなります。
そこで、光を和らげて拡散することによって、被写体の本来の色を残しながら、立体感を自然に再現する事が可能となります。
この事がフィギュア撮影に於いてはかなり重要であると、フィギュア撮影をされた経験がある方には実体験としておありかと思います。

そこで今回、フィギュア撮影は「効果的に影が消せる」という特性を持つリングストロボがあれば万事解決という当初の目論見を敢えて打ち砕き、ディフューザーを扱うことが出来るクリップオンストロボを用意し、ディフューザーを取り付けた場合の効果を検証し、リングストロボとの比較を行なってみる事にしました。
条件を変えつつじっくりと取り組める室内撮影ならともかくとして、一発勝負となるイベント撮影では、最適な撮影機材で取り組みたいもの。2012年のワンダーフェスティバル直前ということもあり、ここでストロボの有効活用の模索も含め、参考になればと思い比較レビューを行います。

ディフューザーレビュー 27
まず今回、用意したのは上の写真にある以下の機材です。

・リングストロボ 「PENTAX AF160FC
・クリップオンストロボ 「PENTAX AF540FGZ
・クリップオンストロボ用ディフューザー 「LumiQuest LQ-103

ディフューザーについては、一般的なディフューザーが正面を向けたストロボに乳白色等の板を用いて減衰する方法ではなく、上を向けてバウンスさせて減衰させ、その光を内部で反射させつつ正面のディフューズ面でさらに減衰させるという二段階を踏むタイプのもの。比較的コンパクトなサイズながら、減衰と拡散の効果は大きい製品です。
フィギュア撮影は人物撮影に比べ、被写体のサイズが小さく、必然的に距離が近づくため、減衰と拡散の効果は人物撮影以上にシビアとなります。よって、より効果が高いものを選びました。会場が混雑するイベント撮影用なので、取り回しや持ち運びも重視したいので【サイズ対効果】を最優先しました。
この製品、美麗なイベント撮影レポートと、後加工をほとんど必要としない完成度の高い現場撮影を行なっている「foo-bar-baz」のスパ先生もイベント撮影の定番アイテムとして愛用しているらしく、チョイスとしては間違いのないものと思っております。 (→こちらに参考になりまくる実写比較レビューもございます

さて、それでは取り付けて行きましょう。

ディフューザーレビュー 01

まずはクリップオンストロボを取り付けます。
ここで用意しているカメラがコンパクトなエントリー機「K-x」で、ストロボがペンタックス純正の中では最も大きなサイズのハイエンド機ので、既に不釣り合いなほどにストロボが大きく見えるのは極力気にしないことにして下さい。
さらに、右に何やら文字列が見えるかもしれませんが、なけなしのアピール行為をしてみせているだけなのでこちらも気にしないことにして下さい。いや、ちょっと気にしてくれると嬉しいかも。

ディフューザーレビュー 02

今回使用するディフューザーはバウンス方式なので、発光面を上に向けます。つまり、上に向けられないタイプのストロボは今回のディフューザーは利用できないのでご注意下さい。
ちなみに、このディフューザーはベルクロテープという、日本国内ではマジックテープとして馴染みのある(どちらも商標です)面ファスナーで取り付ける方式のため、ストロボにはテープの片面を事前に取り付けています。もちろんこちらはディフューザーに付属しています。
(取り付けと取り外しがやや手間取る場合は、別売りの「ウルトラストラップ」を利用した方が便利だそうです)

ディフューザーレビュー 03

そして、こうやってディフューザーを取り付けます。
サイズ対効果が高いとは言っても、やっぱりそれなりには大きいです。
ストロボの発光面(端)からディフューザーの端までは約13cm。イメージしやすい比較対象としては、平均的な日本人のチン(以下自粛)
そして、バウンスをするためにストロボをの発光面を上にしているので、通常の正面に向けるタイプのディフューザーと比べると単純に上下の全長が伸びます。レンズと発光面が大きく離れますので、内蔵ストロボを使うときに比べて極端に影の出方が変わったり、条件によってはストロボ光がほとんど当たらなくなりますので、その点はよくよくご注意下さい。代わりに、アクリルケースなどへの反射が被写体に被りにくくなる利点もありますが……この件についてはリングストロボとの大きな差でもあるので後述します。

ディフューザーレビュー 04

そしてこちらがリングストロボを取り付けた場合。
リングストロボとは何ぞや、と思った方にはこのビジュアルで得心していただけたでしょう。ご覧のように、レンズを囲うようにして光を投射することで、フラッシュ発光による影を極力抑える方式です。代わりに、リングの手前に少しでも出っ張るものがあると、途端に画角内に入って写真にそれが映り込んでしまうので、ディフューザーは実質取り付け不可能となるのです。

ディフューザーレビュー 07

正面からの写真だけだとリングストロボがコンパクトな構成に見えるので、俯瞰のアングルからも。
このように、構造上どうしても手前が大きくなります。
当然、発光面も被写体に近づくので、光の拡散効果は低くなるばかり。そもそも柔らかい光を作るには不向きな方式なのです。

ディフューザーレビュー 06

ついでに、クリップオンストロボ&ディフューザーの方も俯瞰から。
広角レンズで撮影してパースが付いているから、ディフューザーがとっても大きく見えるというマイナス効果しか生み出さない写真でしたすいません。

ディフューザーレビュー 08

実際の大きさはこの程度です。皆さんお馴染みの「ねんどろいど」サイズと比べてもこの程度です。しかもご覧のように、折り畳めばわずか1cm強の厚さに収めることも出来ますので、移動時の持ち運びには苦にならないでしょう。

ディフューザーレビュー 09

拡げた時はこのぐらいのサイズです。日本人の平均的なチン(ry
それに、律っちゃんのデコライトはディフューズする必要無いですし!


それでは実写比較していきましょう。

ディフューザーレビュー 10

今回、比較用の被写体として用意したのは、マックスファクトリーの琴吹紬です。
選んだ理由は、陰影が出やすいポージングないし小物を持っているデザインとなっているからです。サイズはやや大きめな部類なので、比較的距離を取ることができ、リングストロボでもある程度の距離が取れるためにそれなりに光が拡散し、それなりに柔らかな光になってくれそうなので、その点においては今回の検証用としては不向きかもしれませんが、個人的にはリングストロボを贔屓しているので少しでも有利な条件にしたい気持ちもある……って自らこのレビューの価値を損ねる発言をしている気がするのでこのくらいに。
この全体像の撮影時に使用したレンズについては、イベント撮影時に最も使われる焦点距離と思われる、APS-Cイメージセンサ機の50mmを想定し、手持ちの55mmレンズ(35mmフルサイズ換算82.5mm)を用いています。
ちなみに上の写真は、ただ単に室内光で撮影したものです。こちらを基準として見て行って下さい。光源から遠いので光はとても柔らかですが、肝心の顔に陰が落ちてしまっているのが気になりますね。

ディフューザーレビュー 11

そしてこちらが、内蔵のストロボを使った場合の写真です。もちろんディフューズはしていません。
左に傾げた縦位置で撮っているため、やや左からのフラッシュ光となっていて、一部に陰が出ています。髪の部分と、背景を見ると分かりやすいでしょう。
また、光が強い(硬い)ため全体的にやや色が損なわれています。

ディフューザーレビュー 12

こちらは、クリップオンストロボのディフューザー無し。
やはり内蔵ストロボとの差はほぼありません。発光の上限値は内蔵に比べて上回っていますが、この程度の距離なら内蔵ストロボでも充分に届くので、単なる外付けストロボの持ち腐れになってますね。強いて言えば、光をコントロールできる方法が多く用意されているぐらいですが。
発光面が大きく左にずれ、また発光面自体が大きいため、陰の輪郭は内蔵ストロボに比べるとややぼやけて、大きくなっています。でも、ディフューズの場合に比べるとまだハッキリとしすぎていて違和感を禁じえません。

ディフューザーレビュー 13

そしてこちらが、ディフューザーを用いた写真です。
だいぶ陰がぼやけて薄くなっているので違和感も薄れて、被写体の色も全体的に良化し、本来の色に近づいてきていると思います。
これがいわゆる、柔らかい光になった状態ですね。ディフューザーを用いる理由です。

ディフューザーレビュー 14

そしてこちらがリングストロボ。
これはこれで悪くありません。
ですが、陰が無さすぎるのも違和感があるという困った状態になります。凹凸もほとんど目立たなくなるので、形状が判り辛くなったり、立体物としての印象や魅力が損なわれてきてしまいます。
コントラストも乗っていないので、いわゆる「眠い画」になってますね。
また、ディフューザーを用いた場合と比べて光が拡散していない分、被写体と背景との明暗差がちょっと大きくなっています。
やはりリングストロボより、ディフューザーを使った場合の方が立体物の撮影をする上ではメリットが大きそうですね。
この事は、より被写体との距離が近づく小さなサイズの作品になると傾向が如実になりますから、より大きな結果として現れてくるでしょう。

ディフューザーレビュー 15

参考例として、ディフューザーストロボの角度を45°に傾け、近くに白い物を置いてバウンスさせてみました。
この方法はバウンスできる対象(白色限定)が近距離にあれば使えるのですが、まずそのような条件下はイベント撮影時には期待できないので、ひとつのパターンとして参考までにとします。
陰がかなり消えるのでその点においては有効かつ、横や上からの光が入るので面白い写りをするので、チャンスがあれば是非試してみて下さい。
個人的にはコレ、リングストロボの手持ちという方法でちょくちょくやってました。(横から光を入れて面白い陰を出す方法)
コレとか。


続いて、バストアップ=近距離の撮影をしていきます。
レンズは100mm(35mmフルサイズ換算150mm)の利用です。これよりも焦点距離が短いレンズで、バストアップで写るほどに近距離でストロボを焚くと、被写体が完全に白飛びしてしまうので焦点距離が長いレンズを使うのは鉄則です。

ディフューザーレビュー 16

まずは、内蔵ストロボをそのまま当てたもの。
近距離で硬い光を当てるとこうなりますよ、と判りやすい例になっています。
とは言え、陰の出方こそ気になるものの、見た目の印象は決して悪くないので「内蔵を使ったらダメ」と強く言えない結果なのが悩ましいところです。このレビューの目的を根底から否定されそうな雲行きになって来ました。

ディフューザーレビュー 17

では、クリップオンストロボの写真に行きましょう。こちらはディフューザーを使っていません。
でもそれなりに柔らかい光に見えるのは、発光している位置が正面からかなり左に逸れているから。結果として拡散した弱い光しか届いていないため、このような写りになります。
でも、一部にそれなりに強い光が届いているため、被写体の明るさにムラのある奇妙な写真になってしまっていますね。手に持っているプレートの上の肉やカップがテカっていたり、頭頂部が妙に明るかったり。

ディフューザーレビュー 18

そして、ディフューザーを付けずに45°を再度試してみました。
先ほどのような距離がある場合にはなかなか良かったのですが、こちらは距離が短すぎて拡散光はほとんど前に回りこまず、わずかに横から当たる分と、バウンスした分、そして背景が明るくなるというアンバランスな結果となってしまっています。
ストロボの調光も狂い、かなり暗い写真になってしまいました。(この写真は後加工で、被写体の最も明るい部分が他の写真と近い明るさになるよう調整しています)

ディフューザーレビュー 19

そしてこちらが、ディフューザーを用いた写真。
こちらはさすがに自然……とは言い切れない結果に。
理由は明白。やはり発光面がズレ過ぎているため、適切に光が正面に入ってきていないからです。ディフューザーを使っていない場合よりは幾分マシですが、ここまで近づいてしまうと、レンズと発光面の位置が大きく離れているデメリットが如実に出てきてしまいますね。デザインによっては、一部にほとんど光が当たらず、大きな陰となってしまうこともあるでしょう。この写真では手首から掌にかけてが如実です。
ストロボの発光面を正面に向けるタイプのディフューザーならともかく、バウンスを行うタイプのディフューザーは、フィギュアのバストアップ撮影には厳しいと判断せざるを得ないですね。
ある程度の距離を保った撮影に限りましょう。
そもそも、イベントの撮影でこれだけ近付く事は出来ないようになっているでしょうし、近付いたらフィギュアに触れて壊してしまう危険があるためマナー違反です。まあ、現実にはこの比較はイベント撮影の参考にする必要はないでしょう。あくまでディフューザー利用上の注意点として別の用途での参考にする、程度に認識しておいて下さい。

ディフューザーレビュー 20

そしてこちらがリングストロボ。
はい来ました。これぞリングストロボの真骨頂です。
先ほど、発光面が近付くために厳しいと書いた為に見事な矛盾が発生しているようですが、そこはまあ、結果が全てということで水に流してもらえるとありがたいです。
そもそもリングストロボは、接写用途での利用が基本であり、光量の上限(ガイドナンバー)は低く、100mmマクロレンズには専用のアタッチメントが用意されていたりします。
正面から光を当てることにより陰が出にくくなる点については、距離が近づいたことにより奥行き方向への陰が程良く出るので、ワリと良い感じに写ったりします。発色も良いですね。
ただ、ある程度の奥行きは良い陰に見えるのですが、奥に行けば行くほど暗くなるので、奥行きが大きな被写体だとやはり違和感が大きくなります。

ディフューザーレビュー 21

ついでに、リングストロボの機能として用意されている、片側だけ発光をさせないモードを試してみました。この場合は右側だけ発光させています。片側に影が出来ることで、わずかな凹凸部分に立体感を捉えやすくなっています。反面、左奥の背景が黒潰れしているので違和感ありまくりです。
用途に合わせて使い分け、表現として活かすのか、写真として殺してしまうのか、撮影者のテクニックが問われる部分になりますね。


そしてもうひとつ、リングストロボ愛用者として外せない部分の写真を紹介します。
今回、このフィギュアを被写体に選んだ理由のひとつにもなっています。

ディフューザーレビュー 22

内部ストロボでの撮影で顕になったのは、紛う方なきなきユートピア。
しかし、せっかくの桃色の聖地の一部が陰ってしまっていて見難くなっています。これは大変に残念な事ですね。

ディフューザーレビュー 23

クリップオンストロボでチャレンジ。
そして、無様に敗走。
発光点が遠のいたので、スカートの壁に完全ブロックされ、ユートピアは隠蔽されてしまいました。
闇に飲まれたユートピアに光を灯し、明るく元気にしたい。
みんな、その心はひとつでしょう。
太陽さん、たまには下から照り付けませんか?

ディフューザーレビュー 24

そして僕らが待ち望んだ太陽さんが現れました。
リングストロボユーザーの利点。それはまさしく、全ての陰を取り払い、全ての地を照らすこと。その美しさをひけらかし、みんなを幸福にする事です。(写された側の心情は全力で考えぬフリ)


とまあ、最終的にはやっぱりリングストロボ最高だろ、と結論付けたいところですが、イベント撮影で行うには相応しくない条件でばかりスイートスポットを見つけていてフェアじゃないし、イベント撮影の参考にするためのレビューとしてはダメな方向に行っているので、ここでイベント撮影時におけるリングストロボ最大の欠点も紹介しておきましょう。


それは、透明な板(アクリルケースなど)によって、我らが女神たちと空間を隔てられている際に発生してしまう、悲しい事件です。

ディフューザーレビュー 25

女神の姿を覆い隠すようにUFOのような発光体が出現!
つまり、リングストロボはレンズの真正面から光を発するため、板と平行して正面から光を当てると、被写体の前で見事に反射してくれるのです。これでは根本的に使い物になりません。
結果として、イベント撮影でリングストロボを使う際に、アクリルケース内の被写体を撮影する条件が発生した場合には、必然的に正面からのアングルを避け、斜めの角度から撮影することになります。
当然の事、作品のベストアングルは正面から見えるように置かれているワケで……\(^o^)/

ディフューザーレビュー 26

こちらがクリップオンストロボ&ディフューザーを用いた場合。
アクリルケースではなくフィギュアのパッケージ(ブリスター)を撮影しているため、条件はこちらもかなり悪い結果となっていますが、すくなくともイベント撮影ではリングストロボに比べて良い結果になるでしょう。
ただし何度も言うように、発光面がレンズの位置と離れている事から、ケースが小さく、上下左右が透過しないようになっていたりするとお手上げです。肉眼で見るための展示ですから展示者側が撮影者に文句を言われる筋合いはないでしょうが、撮影させないつもりなのかよと悪態も付きたくもなると言うものですね。
願わくば、このような展示方法を用いないでいて欲しいものです。
あと、ストロボ光(≒太陽光)と色温度が違いすぎるスポット光を当てていたり、背景が黒色のために撮影者や近くの人が鏡面効果で(亡霊のように)映り込んじゃうとか。


そんな様々な思惑を乗せながら、今回のワンフェスも撮影を楽しもうと思います。いくらか困難が合った方がやり甲斐があって燃えるというものですからね。
皆さんにとっても、幸多きワンフェスとなるようお祈りいたします。
《この記事は、2012年の冬ワンフェス2週間前に作成されました》